だから、君に
芹澤さんに促され、駅ビルの駐車場にとめられた彼の車に乗り込んだ。
初売りの垂れ幕がかかり、新年早々繁盛した様子の駅ビルは、福袋を手にした家族連れで賑わっている。
「ここからだと一時間くらいかかるけど」
エンジンをかけ、芹澤さんが言った。
「何度か行ったことは」
「あります」
僕の言葉に、彼の横顔が微笑んだように緩む。
「そうか」
助手席に座った僕の目に、何年も昔の正月の光景が蘇った。
二人で一つずつ、由紀と同じ福袋を買ったときのことだった。