だから、君に

干す作業を麻生に任せ、僕はベランダの柵にもたれ掛かった。

グラウンドの新緑が眩しくて、日差しが緑を黄金色に変えている。
じっと耳をすますと、運動部の野太い声に挟まれるように、波の音が聞こえる気がした。

「……雨が降ったらどうすんだよ、発表」

小さくつぶやいたつもりが、麻生には届いていたらしい。

「雨ですか?」

「あぁ。降るかもしれないだろ」

「こんなに晴れてるのに?」

麻生は空を仰いで、自信ありげに笑った。

「大丈夫。晴れてます」

根拠のない力強い口調に、僕はやれやれとため息をついた。


その一週間は、快晴続きだった。




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