だから、君に
「今日は生徒会の引き継ぎがあって、学校に行ったんです。そのまま図書室で勉強していたので」

勉強か、と僕は頷いた。一番伸びる時期である夏休み、根岸は充実した成果が挙げられているのだろう。

「麻生は、勉強ちゃんとしたか?」

りんご飴をバリバリとかみ砕いていた麻生は、僕の問いには首を傾げるだけで答えず、隣の根岸を見上げた。

「ね、まだ時間あるかな?」

「時間?」

打ち上げ開始まで、あと十分ほどだ。

「なんか、喉渇いちゃって。あそこの露店で買ってきてもいいかな?」

麻生が指差したのは、僕らが立つ場所からそう遠くない露店だった。
でかでかと『ラムネ』の旗を立ち上げた先には、かなりの列ができている。

「結構並んでるな。いいよ、僕が行くから」

僕たちに向けるよりも少し優しい色を混ぜて、根岸が麻生に微笑んだ。

「え、でも……」

「いいよ。こんな人込みじゃ、並ぶのも大変だし」


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