だから、君に
「何?」
「こーそくで禁止されてるんだよ」
知ってた?と由紀は僕を横目で見て、にやりと笑った。
こーそく、高速、拘束。
突然のフリに、僕の頭が『校則』にたどり着くまで少し時間がかかった。
「あぁ。それは驚いた」
「全然驚いてないでしょ」
「その校則をしっかり守る中学生がいたら、驚くけど」
僕の言葉を受け、由紀はまた棚に目を戻す。その横顔はなぜだかとても楽しげだった。
「そういうの、ってさ」
指で背表紙をそっとなぞりながら、由紀は少し笑い声を混ぜながらつぶやく。
「そういうの?」
僕は彼女が見つめている本を覗き込んだ。
『ティファニーで朝食を』。
「ちっちゃな校則を破ること」
「あぁ」
「そういうのってね、」
一瞬ためらったあと、由紀は続けた。
「なんだか、自由な気がするよね」
「自由?」
「うん」