だから、君に
本屋を出ると、外はすっかり夕焼けに染まっていた。

何も買わず、ただ鞄をだらしなく肩から下げて、僕たちは帰り道を並んで歩いた。

公園の前を通り掛かったとき、たしかランドセル姿の子供達が僕にぶつかって、

「無邪気だなぁ、小学生は」

と僕がつぶやいたとき、

「あんたも一年前はアレだったんだよ」

そんなことを言って、由紀はにやにや笑っていた気がする。

カラカラと音を立てながら、小学生の集団が立ち去っていくのを、僕たち二人は立ち尽くしたまま見送っていた。

ひゅう、と風が僕の顔をたたき付けて、思わず強く目をつむった。

「なんか、」

隣で由紀の声がして、僕はうっすら目を開けた。

「風が冷たいね、ちょっと」

「うん」

「……空がさ」

「空?」

首を傾げてみせると、由紀は顔を空に向けたまま、ぽつりと言った。

「空の色が、みかんゼリーが濁ったみたい」

由紀の視線を辿って、僕も空を見上げる。


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