運命
その頃、愛の家では‥

『お父さん、朝食できましたよ』


『今行く。』

そう返事をしてお父さんが台所に来た。


『あら、どこかお出かけですか?』


『ちょっと釣りにな‥』


『そう。珍しいわね。夕飯のおかず期待してもいいのかしら(笑)』

お母さんは嬉しそうだ。



しばらくすると、お父さんの携帯が鳴った。

『分かった。今から出る』

それだけ伝えて電話を切った。


『誰からですか?』


『今日、一緒に釣りを行くヤツからだよ。見送りはいいから。』


『わかりました。では気をつけて』


お父さんは背中を向けて

『夕飯、期待していいぞ』

それだけ言って出て行ってしまった。


『お父さんってば(笑)』

お父さんとは打って変わって、今日のお母さんは朝からご機嫌のようだ。





その頃、お父さんは‥

無言で今日一緒に釣りをするヤツを見つめていた。


『お、おはようございます。荷物お持ちします。』


『悪いな。』


『今日は、どちらに??』


『とりあえず車出してくれ。』


『分かりました。』

エンジンをかけ、車が走り出した。


『愛には‥このこと』


『言ってません。今頃、疲れて寝ていると思ってるかと‥』

そう。お父さんと一緒につりに行く相手は聡だったのだ。
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