運命
実は昨日、愛から電話が来る前に聡の携帯に電話をしたのは、愛のお父さんだったのだ。


聡の携帯がなった。携帯の画面には番号しか表示されていない。

『誰からだろう?』

聡は電話に出た。


『もしもし?高橋ですけれども。』


『君、明日あいているか?』


『あの〜。どちら様でしょうか?』


『愛の父だ』


『愛のお父さん!?失礼いたしました。』


『それで明日はどうなんだ?』


『明日ですか?明日は午前中でしたら時間ありますけど‥』


『釣りに付き合いなさい。時間は9時だ。いいか?』


『あっ、はい。分かりました。9時にお伺いいたします。でも、どうしてこの番号をご存知なんですか?』


『愛には絶対に言うんじゃないぞ。言ったら今後一切、君とは逢わん!!
明日は時間厳守だからな。遅れるなよ!!』


ガチャ

電話は終了した。



『だから何でこの番号知ってるんだろう?』

そう思っていた直後に、愛からの電話がかかってきたのだ。愛に聞こうかと思ったが、聡にはお父さんとの約束があったので、聞くに聞けなかった。




聡の番号は、愛が部屋のベッドに携帯を置いて外に出たときに、お父さんがこっそり部屋に入り、聡の番号を控えていたのだ。そして、愛の机の上に律儀に置いて部屋を後にした。


この事を2人が知るのは、まだまだ先の事である。
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