運命
その後、2人の間に「会話」というものはなかった。そんな空気ではなく、ただ音楽だけが流れていた。

お父さんの道案内によって、ある場所に辿り着いた。



『ここって‥初めて愛の家に挨拶に行った後に3人で来た場所ですか?』


『どうしてそう思う?』


『一瞬ですが‥お父さんの表情が柔らかくなったので。すみません。職業柄、人の表情とか気に止めてしまうんです』



『‥私は、君のお父さんではない』


『失礼しました。僕も、君ではなく「高橋聡」です。よろしくお願いします』



お父さんの動きが一瞬止まった。


『釣りの準備してくれないか?‥高橋くん‥』

初めて、聡の事を君ではなく「苗字」で呼んでくれた。聡にはそれが嬉しくて


『はい、お父さん』

って言ってしまった。


『君!!』

お父さんが冗談ぽく呼んだ。
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