運命
『答えは変わりません。もちろん、愛さんです。でも‥利用者は僕にとっては家族のようなものなので大切です』


『そうか‥。もし、愛だけが大切だって言ったらぶっ飛ばしてやろうと思ったんだがな‥』


『じゃあ』


『結婚は許してない。
一人暮らししているんだろ?まずは一緒に暮らしてみなさい。お互いを理解し、助け合っていけるなら‥その時は考えてやる。話はそれからだ』


『あ、ありがとうございます。』


『愛を絶対に悲しませるなよ!!』


『はい』


『それから‥路上で抱き合ったり、キスをするのはやめなさい。見っとも無い』


『見てたんですか?』


『見えたんだよ!!』


『すみません‥』


それから無言で釣りをやったが、今回も収穫なしだった。
「ここ、釣れないな」最後にお父さんはそう呟いた。


その後、聡は愛のお父さんを家まで送り届けた。

『今日はありがとうございました。また、釣りやりましょう。』


お父さんは無言のまま玄関の扉を掴んだ。

『昨日かけた番号‥私のだから携帯に登録しておきなさい。それから‥今日逢ったことは愛にも、お母さんにも言わないこと』


『分かりました。』


『あと、同棲は半年記念からにしなさい。それまでは、家においておく』


家においておくって‥愛はモノじゃないのに。
お父さんも離れたくないって事だな。


『分かりました。その後は、僕が守ります』

するとお父さんが一度振り返った。でも無言のまま家の中に入ってしまった。



聡は一度、家の前でお辞儀をしてから車に乗り、仕事に向かった。
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