運命
『あ‥きら?』


窓際に座って空の星を見ていた聡が、私の声に反応して振り返った。

『愛‥なのか?』

久しぶりに聞いた聡の声は、微かに擦れていていた。
久しぶりに見た聡の目は捨てられた子犬のようだった。


『うん。そうだよ。泣いてたの?』


『どうだろ。そうなのかな‥覚えてない‥』

今にも倒れそうなくらい弱っていた。
そんな聡の姿を直視することが出来なくて、私が抱きしめてあげた。


『どうしたんだよ、愛?』


『ごめんね‥一人にさせて‥本当にごめん。聡のこと信じ抜くことが出来なくてごめん。聡の‥』


その時、聡の目から涙がこぼれた。

『あれ?何で涙なんて流れるんだよ。今日の俺‥おかしいかも』


男の人の泣いている姿を始めて見た。
女が泣くより全然‥純粋で綺麗な涙だった。



『泣いて良いよ。私はずっと聡の傍にいる。ずっと抱きしめてるから‥』

そう言ってさっきより、もっと強く抱きしめた。
苦しいって言うくらい強く‥
これ以上、私たちが離れられないくらい強く‥。


聡は、声を押し殺して私の胸の中で泣き続けた。
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