運命
私は勇気を出して言った。


『隣で‥寝てもいいかな?』

すぐに返事は返ってこなかったけど「いいよ」って言ってくれた。私は枕を持って聡の寝ている横に行った。

それでも聡の体勢は変わらず、私は聡の背中を見つめていた。



どうしてだろう?

ドキドキしてるのは私だけ?



だんだんと不安が募り、私は声を押し殺して泣いた。すると私の変化に聡が気が付いた。


『どうした?怖い夢でも見たのか?』

聡が振り向いてくれたから、やっと目が合った。



『ドキドキしているのは私だけ?』


『えっ?』


『家だって別々のベッドでいつも寝てるし‥もう同棲して何ヶ月も経ってるのに‥あと何を乗り越えれば私たち‥』

その時、聡が私を強く抱きしめた。


『緊張しているのは愛だけじゃない。俺だって‥』


ドクン 

ドクン


聡に触れることで、心臓の音を聞くことができた。聡も‥緊張しているんだね。



『私は‥』

私の声を消すように、聡が話し出した。


『ダメだ。今日はまだダメだ。』


『今日はって。じゃあ、いつならいいの?』


『‥入籍するまでは‥』



勇気を出して聞いた。

『どう‥して?』


『それは‥』

その後に続く言葉を待った。



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