運命
『私は、書くべきだと思います。』


そう話したのは、山本さんだった。



『確かに、梅沢さんの言うとおり今回は「新入社員」を対象としたものです。
しかし、どこの職場で働いている人の意見か分からないと今後改善されないと思います。』



山本さんの言うことも分かる。

でも‥


それ以上に、私たちが感じていることを職場の人に知られるのが怖かった。みんな、それを心配していたのだ。



『でっ、でも‥』




私が立ち上がった時、部屋の扉が開いた。





『すいません。遅刻してしまいました。』


参加者の最後の一人が現れた。




えっ!!

私は、思わず彼を見つめてしまった。


『なんで‥ここに‥』

『とりあえず、このシールに苗字だけでいいので記入して、空いてる席に座ってください。そして簡単でいいので自己紹介をしてください。』


私の声が小さくて山本さんの声と重なってしまった。




『あっ、はい。』

左手で頭をポリポリ掻きながら席に着いた。



クスッ

私は彼の行動を一部始終見ていた。


「相変わらずだな。」

そう心の中で思った。
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