運命
「伝言メモ1を再生します」

はい。
私は思わず機械の声に返事をしていた。


『あー、えーっと‥マイクテスト、マイクテスト』

ガチャ。


『えっ!?これだけ?じゃあ、後の2件も聡からだよね。何だろう(笑)』

期待を胸に2件目を聞いた。


『えーっと、10時10分。婚姻届を提出して受理されました。この時間を持って、愛は「高橋愛」になりました。おめでとう!!
それでな‥直接言うのはちょっと照れくさいので、この場を借りて言います。
愛してるよ、愛‥‥なんてな。』

ガチャ。


『なんてな。って言わなかったらかっこよかったのに(笑)私も愛してるよ、聡。
さて、最後は何だろう』


再生ボタンを押そうとしたとき、電話がかかってきた。

かけてきた相手は「聡」だった。



『もしもし?今、伝言メモ聞いてるよ。何あれ?3件目もあんな感じなの?』


『えっと‥どちら様でしょうか?』

えっ?何で聡の携帯から女の人の声が聞こえるの??


『えっと‥聡の彼女じゃなかった!!妻ですけれども』

少し言うのが照れくさかった。


『奥様でいらっしゃいましたか。私、総合病院で働いております、宮下と申します。こちらの携帯のリダイヤル履歴の一番上の方に今お電話をしたんですけれども、落ち着いて聞いてくださいね。』

何だか嫌な予感がした‥


『こちらの携帯の持ち主の方、つまり‥あなたの旦那さんは、先ほど‥お亡くなりになりました。』


『今‥なんて‥??』


『先ほど人身事故に遭われまして、緊急手術を行なったのですが‥病院に運ばれたときにはすでに心配停止の状態でして‥残念ですが‥先ほど息を引き取られました。』


『そん‥な‥。だって今、聡の伝言メモ聞いてるんですよ!!婚姻届を提出してきたって‥なのに‥なんで‥』


『遺体の確認、引取りをお願いしたいので、ご足労ですが一度こちらの病院まで足を運んでいただきたいのですが。‥聞こえていますか?もしもし?もしも‥』


プープー

私は無意識に電話を切っていた。


『そんな‥嘘だよね?だってこの後、一緒に私の誕生日を祝ってくれるんだよね?聡?』
< 178 / 205 >

この作品をシェア

pagetop