運命
『愛ちゃん‥』

病院の受付には、聡のご両親と私の親が待っていた。


『どうしたんですか?みんな揃って‥婚姻届なら聡が一人で今朝、出してきてくれましたよ。私達は晴れて夫婦になりました。』


『愛ちゃん‥もしかして、何も聞いてない?』


『そんなはずはないですよ。一番に高橋さんの奥様にご連絡したので』

さっき聡の携帯から電話をしてきた宮下さんが私達の前に現れた。


『始めまして。宮下と申します。高橋さんの元には私がご案内いたします。』


私達は長い階段を下って行った。



『あの〜。愛の母ですけれども‥。先ほど聡君の事を愛に伝えたとおっしゃいましたよね?』


『ええ。高橋さんの携帯のリダイヤル履歴の一番上が、奥様だったので最初に事情を話しました。しかし、途中で電話を切られてしまったので、こうして皆様にもご連絡を致しました。』


『じゃあ、どうして娘は‥聡君の事を覚えてないんでしょうか?電話で聞いていたなら知ってるはずじゃ?』


『たぶん‥ショックが大きすぎて、私が言った事を自分の意思で記憶から消してしまったんだと思います。』


『それは記憶喪失‥ですか?娘は治るんですか?』


『記憶喪失とは少し違います。高橋さんにお逢いすれば、記憶は元に戻ります。ですが‥』


『なんでしょうか?』


『深い悲しみが押し寄せてくるかと思います。娘さんから目を離さないで下さい。』


『分かりました。』


そんな話をしていると、聡の眠っている部屋についた。


『高橋さんは、こちらで眠っています』


『聡はここにいるのね?聡〜』

私は、大きな扉を開けた。


『あ‥きら?』


聡の顔には白いタオルが置いてあった。
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