運命
毎日ではないけれど、何度か聡のお母さんが家に来てお線香をあげてくれる。

今日も久しぶりに訪ねて来た。


『お茶入れましたので、どうぞこちらでゆっくりして行って下さい』


『ありがとう‥いつも突然来てごめんなさいね。』


『いいえ。聡もお母さんに逢えて喜んでいると思います。』


『そうだといいけど。』

お茶を一口飲んでから、聡のお母さんが話し出した。


『愛ちゃん、ちゃんと食べてる?顔色あんまり良くないけど‥』


『食べてないです。聡が食べないのに、私だけ食べるわけにはいきません。』


『じゃあ、ずっと食べてないの?』


『そうですね。あっ、でも大丈夫ですよ!この通り元気です。仕事も毎日行っていますし。』

私は明るく振舞った。


聡のお母さんは持っていた湯飲みを机の上に置いた。

『私ね‥愛ちゃんの事が心配なの。聡の傍にいたら立ち直れると思っていたけど‥食事も取れない状態なら‥実家に聡を連れて帰ります』


聡のお母さんは立ち上がり、遺骨を持って玄関に向かった。


『ちょ、ちょっと待ってください!!聡を取らないで下さい。返して下さい。聡がいないと私‥‥』


バタン

私はそのまま倒れこんでしまった。


『愛ちゃん!?愛ちゃん!!』

聡のお母さんは急いで救急車を呼んだ。



意識が朦朧としてる中、私は懐かしい夢を見ていた。

初めて聡と一つになれたときに見た、家族3人で公園で遊んでいる夢を。
前回は仲良くブランコで遊んでいる所で夢は終わったけど、今日はその続きを見ることが出来た。

『ねぇ、お母さん。お父さん何処行っちゃたの?』


『お父さんなら、さっきブランコで遊んでたじゃない』


『でも見て!お父さん何処にもいないよ?』

公園を見渡しても聡の姿がなかった。


『聡?ねぇ何処行っちゃったの?出てきてよ!聡‥』


ここで夢が終わった。目を覚ましたときは、病院のベッドの上だった。
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