運命
『愛、大丈夫?』


『もう大丈夫だよ。ちょっと考えすぎちゃっただけだから‥それよりどうしたの?』


『うん‥愛に話してない事が一つだけあるんだ‥それを‥話そうと思って‥』

いつもの桃花と様子が違う。
どんな話を聞かされるのか、息を呑んで待った。


『実はね‥私、一度流産してるの』


『‥‥‥』

予想外の言葉に声が出なかった。


『そうだよね。驚くよね!!ごめんね、こんなときに‥』


『いつ?いつ流産したの?』


『去年のゴールデンウィークに愛と逢ったでしょ?あの日に‥』

あの日に?
何でちゃんと話を聞いてあげられなかったんだろう‥何にも出来なかったと思う。でも‥話なら聞いてあげられたのに‥ごめんね。


『相手は、大学時代から付き合ってた彼?』


『うん。彼ね、結婚してて子どももいたの。それなのに、私達の間に新しい命が誕生した事が分かって‥産みたい!!なんて言えなかった。』


『桃花‥』


『私ね、あのとき産まなかったことを今でも後悔しているの。だって、好きな人の子どもだよ?認知してくれなくても‥私一人で育てればよかった。私はあの子を‥』

桃花は混乱し始めた。


『大丈夫だよ!!桃花の子どもなら大丈夫。ちゃんと分かってくれたって』

私は桃花の頭を優しく撫でた。


『ごめんね‥私が取り乱しちゃって‥』


『ううん。』


『愛は‥どうするの?聡さんとの間に出来た子どもなんでしょ?産んで一人で育てること、出来る?』



『私はこの子を‥』

その時、誰かが部屋に入ってきた。
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