運命
『聡のお母さん‥』

部屋に入ってきたのは聡のお母さんだった。

『愛ちゃん、この間はごめんなさいね‥あなた達は2人で1人だったのに、無理やり離そうとして‥』


『いいえ。私の方こそご迷惑をおかけしてすみません。ようやく落ち着いてきました。それに‥聡の死を‥受け入れることも‥』


『そう‥今なら正しい決断が出来そうね‥』


『正しい決断?』


『愛ちゃんのお母さんから聞きました。聡との子どもを身ごもったと。ありがとう。でも‥聡はもうこの世にいないの。子どもを産んでも、愛ちゃんが一人で育てないといけないの。だから‥残念だけど今回は‥』


『どうしてそんな身勝手なことが言えるんですか?』

桃花が激怒した。


『簡単に子どもをおろせなんて言わないで下さい‥今、愛のお腹には新しい命が誕生したんですよ?もっと喜んでくださいよ‥産んで欲しいって‥どうして言ってくれないんですか?赤ちゃんは‥産んで欲しいって言えないんですよ‥』

桃花は鳴き崩れた。


『私だって、愛ちゃんに産んで欲しいわよ。聡の子どもなのよ?でも‥愛ちゃんに幸せになって欲しいの。まだ24じゃない‥これからの人生を聡を思い続けて生きるなんて‥』

聡のお母さんも泣き崩れてしまった。


『ごめんなさい‥一人にしてもらえませんか?2人の言いたいことはよく分かりました。後は一人で考えたいんです。お願いします』


2人は部屋から出て行ってくれた。
私はベッドから降りて、窓の外を見つめた。


『聡も‥何かに悩んだり、一人になったときは窓の外を見ていたっけ‥』

私は聡と同じ行動をした。
すると、窓の先に聡らしき人が現れ、私に微笑みかけている。
私も彼に微笑んだ。
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