運命
教会の中に入ると、思っていた以上に人が少なかった。
私は、どこに座ろうか考えていると空が手を引っ張って座った。


『空ここでいいの?こっからじゃ、あんまりよく見えないでしょ?』


『僕、ここがいいの。ここで大丈夫だから』

その席は、一番後ろではないけど、後ろの方の席だった。私は、空がここにしたいなら‥と思い、その場に座った。



しばらくして、先輩がお父さんと一緒に歩いて入って来て、ゆっくりゆっくり旦那さんの元に歩み寄った。


「あれ?」だんだん、私の視界がぼやけて来た。私どうしたんだろう‥

すると空がハンカチを渡してきた。

「そっか‥私、泣いてるんだ‥」私は声を押し殺して泣いた。



『お母さん、僕トイレに行きたい!!』

いつもそんな事言わないのに、珍しいことを言ってきた。


『お母さん、漏れちゃう!!』

私と空は式の途中に抜け出して外に出た。





『お母さん、これで声を出して泣けるね』

空は私の頭をポンポンってしてくれた。空を見ると聡に見えてきた。


『あ‥きら?』


「天国で2人の事を見守ってるから」

それだけ伝えると、空に戻っていた。


『お母‥さん?』


『何でもない。いつもありがとう、空』


『ううん!!僕、お母さんもお父さんも大好きだもん。それから「空」って名前も』







空が中庭の水で遊んでいる時、私はまだ解約されていない聡の携帯に電話をした。
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