運命
車のエンジンをかけると、私の大好きな曲が流れてきた。


『これって‥』


『あ〜今、練習してるんだ。恥かくわけにいかなくてさ。』


『誰かの前で歌うの?』

いくら聞いても、聡は秘密の一点張り。

教えてくれたってイイじゃん!!ってリスみたいにほっぺを膨らませて反抗した。


『じゃあ〜‥さっき、何に悩んでいたのか教えてくれたら言う』

そう言って真剣な眼差しで私を見てきた。



『分かったから、前見て運転してね?』


『あっ、悪い』

それだけ言って耳はこっちに集中させて運転をしてた。



私はそれを確認してから話を始めた。


『さっきね、玄関でお母さんと話をしている時、お父さんも途中から会話に入ってきたんだ。
今日、聡の両親に逢うことや結婚する事‥‥お母さんにしかまだ話してなくてね‥何から話したらいいのか分からなくなっちゃって‥

うちのお父さん、本当に怖いんだ。絶対、聡を家に連れてきたらグーで一発‥イヤ、二発は殴ると思うの。
だから、聡に逢わせる前に私の口から話をしとこうと思ってるんだけど‥』


『思ってるんだけど?』


『うん。まずは今日を乗り切ってからにしようかなって。一つずつ乗り越えていくしかないもんね』


『愛‥』


『私、絶対に聡の両親と仲良くなって結婚‥認めてもらうから!!』

両手で握り拳を作って気合いを入れた。
その時、信号が赤に変わり車が停止した。
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