運命
『ただいま。』

聡が玄関先で言うと、近くの部屋の扉が開いた。そして‥
そこから、聡のお父さんとお母さんが揃って出てきた。


『ただいま。』

もう一度聡が言うと


『おかえり』

お母さんが嬉しそうに聡に向かって言った。その直後、今度は私の方を向いて


『あなたが‥』

そう言った時、私は「今だ!!」と思い一気に挨拶した。


『はじめまして。梅沢愛と申します。聡さんとお付き合いさせて頂いております。
宜しくお願いします。』

そう言って軽くお辞儀をした。
すると


『そんな堅苦しい挨拶はいいわよ。さぁ上がって』

そう言って私を強引に部屋に招き入れてくれた。


私は、今の状況が分かっていなかった。玄関先で怒鳴られるとばかり想像してたのに‥いつの間にか部屋の中にいるなんて‥

その上、私を見る目が‥優しい??


『えっと‥』

私から話を切り出そうとしたら、聡のお母さんの声にかき消されてしまった。


『はじめまして。聡の母です。こうして逢うのは初めてですが、いつも聡から話は聞いています。私ね、実はずっと愛ちゃんに逢いたかったのよ。
あ!!愛ちゃんって呼んでもいいかしら?』


『あっ、はい。』


『そんな畏まらなくてもいいのよ。私たちは家族になるんですもの。
あなたも愛ちゃんに挨拶してくださいな。』


今度は、聡のお父さんが話し始めた。

『えっと、聡の父です。そうだな‥聡なんかで本当にいいんですかね?』


『お父さん!!』


『仕方ないだろ。こんな時なんて話していいのか分からないんだよ!!こんな可愛い子が嫁に来るなんて。』


『可愛いだなんて‥そんな‥』

私は恥ずかしさのあまり下を向いてしまった。すると、横に座っていた聡が小声で


『だから大丈夫だって言っただろう?』

そう言いながら私の頭を軽くポンと叩いた。


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