運命
『だって‥』

『だってじゃない。俺の言葉を信じてなかったのか?』


『そうじゃないよ!!そうじゃなくて‥』

私たちがコソコソ話をしていると、聡のお母さんが

『ちょっと聡!!愛ちゃんを独り占めしないでくれる?お母さんに話させてよ。』


『はいはい、どうぞ。』

そう言って私の背中を押した。


『愛ちゃん、あっち行きましょう!!ここじゃ聡が邪魔だわ。』


『えっと‥』


『美味しいケーキ用意したのよ。一緒に食べない?』

一人娘が家に帰ってきた時のお母さんのように嬉しそうだった。


『じゃあ‥お言葉に甘えていただきます。』


私と聡のお母さんは、少し離れた場所でケーキを食べ始めた。




『聡から愛ちゃんの話は沢山聞いているわ。初めて聡の口から女の子の名前を聞いたのは、実は愛ちゃんだったのよ。』


『そうなんですか?』


『そうよ。あれは、中学の時だったわ。急に「CD買うからお金頂戴!!」って言うから、何かしら?って思って部屋を覗いたら、毎日歌の練習してるのよ。

始めは、音楽祭とかがあるのかと思っていたけど、いつしかバンドのメンバーに「梅沢愛を招待したい!!」って頭下げてお願いしてね。

この時、直感で分かったわよ。聡は愛ちゃんが好きなんだって。何日かしたら部屋に女の子を呼ぶからって言われてね、私はてっきり愛ちゃんと付き合ってるんだと思っていたのよ。でも違うのよね??』


『はい。中学のときは、私はファンの一人としてミニライブを見に来ていましたが、私たちは付き合っていませんでした。その前に、聡さんが私の事を気にしていたって事にも、私気づいていませんでした。』


『愛ちゃんは、天然なんですってね(笑)』

私は、否定するべきか認めるべきか分からず結局何も言えなかった。



『その後、ある運命的な再会をしたのよね?』
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