運命

愛のお父さん

『ただいま』


元気よく言うと、お母さんが玄関まで出てきれくれた。

『おかえり。どうだったの?』


『うん。詳しい話は後で部屋で話すね。それよりお父さんは?』


『部屋でテレビ観てるわよ』


『分かった。』

私は自分の部屋に行かず、お父さんのいる部屋に向かった。


『お父さん』


『愛。おかえり』


『ただいま。今ちょっといいかな?朝言えなかった事なんだけど‥』

お父さんの様子を伺った。


『おう。いいぞ!どうした?』

お父さんは観ていたテレビを消し、私の方を振り向いた。


『お母さんもこっちに来て。』

台所にいたお母さんも部屋に呼んで3人で向かい合って座った。



『あのね‥お父さん。』

一度、間をおいてから話し始めた。


『私ね、2ヶ月前から付き合っている彼がいるの。中学のときの同級生で、名前は高橋聡って言うんだけど‥

中学のときは、彼が所属するバンドメンバーのミニライブがある時に家に行ったりしててね。でも、その頃は「友達」って言うか「仲間」みたいな関係だったの。
それが、この間仕事で意見交換会っていうのに参加したとき、彼も同じ場所にいてそれから頻繁に連絡を取るようになったの。』

お父さんも、お母さんも静かに私の話を聞いてくれていた。

『告白は彼からだったんだけど、その時に「将来の事も視野に入れて付き合って欲しい」って言われて‥私は「うん」って返事したんだ。それで今日、聡の‥彼のご両親に挨拶に行ってきました。私の事を本当の娘みたいに思ってくれて‥もし同居することになっても大丈夫っていう確証がもてたんだ。

来月、彼が家に来るのでその時、私たちが真剣だって事を分かって欲しいの。お願いします』


そこまで言うと、お父さんは何も言わずに立ち上がって部屋を出て行った。


私はお母さんを見ると、何も言わずに縦に首を振って

『今日は疲れたでしょう。お風呂に入ってゆっくり休みなさい』

それだけ言って台所に戻っていった。



私はお風呂にゆっくり浸かり、今日の疲れを取った。
そして部屋に戻り聡に電話をした。
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