運命
『愛さんには、1ヶ月記念にアパートの合鍵を渡しました。でも、これはあくまでも愛さんを安心させるために渡したものであって、いつでも入っていいというものではありません。愛さんのお母さんかお父さんの承諾が出たときだけ、使えるようにしています。』

聡は座布団から降りて話し始めた。

『まだ未熟者ですが、精一杯頑張って愛さんを幸せにします。どうぞ結婚をお許しください』


私も聡と一緒に頭を下げた。



『話は終わったか?』

お父さんが口を開いた。


『はい。』

聡が返事をすると‥


『じゃあ、もういいだろう。今日はこれで帰ってくれ。』

お父さんはまた、新聞を広げて読み始めた。


『お父さん!!何言ってるの?』

さすがに、この態度は許せなかった。


『愛、お父さん昨日確認したよな?話を聞くだけでいいか?って。だから約束通り話は聞いた。そして終わった。だったら、もうここにいる理由はないだろ。違うか?』

返す言葉がなかった。
確かに昨日は、話しを聞いて欲しいとしか言っていない‥



『分かりました。今日はこれで失礼します』

聡は立ち上がり、一度頭を下げてから部屋を出て行った。


『聡!?』

私は急いで後を追った。
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