運命
『ごめんね‥私がもっとしっかりしていれば、こんなことにはならなかったよね‥』


『何言ってる。愛は悪くない。元気出せって』

そう言って軽くデコピンをしてきた。


『1回目で承諾して貰えるなんて思ってなかったよ。何回でも挨拶に来る。そして、本気だって事、分かってもらう。』

聡は自信に満ちていた。


『ありがとう‥お父さん頑固で‥本当にごめん』


『愛はお父さん似かもな(笑)』


『私も頑固だってこと?』


『さぁ~(笑)』


『ひどぉ~い!!』

両手を軽く握って叩こうとした時、右手を掴まれ真剣な顔で話してきた。


『愛、さっきも話したけど来月の22日に1日休みが取れたから、1ヵ月後にまた来る。お父さんにももう一度伝えておいて。』


『分かった。』


『それから‥今日のデートは延期な。今日は、お父さんの近くにいてあげて。きっと今、寂しがってるから。』


『でも‥』


『今度埋め合わせしよう。な?』


『分かった。じゃあ、連絡‥してね。』


『おう。それから‥』

聡は私の耳元で囁いた。

「2発殴られる覚悟はあったんだけどな(笑)」


そういえば、お父さん殴りかからなかった。意外‥
そんな事を思っていると、お母さんが玄関まで来てくれた。


『ごめんなさいね。でも今日は来て下さってありがとう』


『いいえ。こちらこそ。また挨拶に伺わせていただきます。それでは、これで失礼致します。』


『聡、またね』

私は手を振って見送った。でも聡は笑い返してくれたけど、手は振り返さなかった。
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