運命

『どう？釣れた？』

そう。私の向かった先はお父さんのいる場所だった。
お父さんは返事を返してくれなかった。でも、私は話し続けた。


『お母さん、釣りをしに来たんだから！！なんて言ってたけど‥あの場所、絶対魚いないよ‥。今日の夕飯は、お父さんの腕にかかってるんだからね。』

返事は‥返ってこない。


私は一気に本題に入った。

『‥私ね、お父さんの事好きだよ。でも‥それ以上に聡の事が好きなの。
確かに、来年の私の誕生日に入籍するって笑っちゃうよね。９ヶ月も先の話だよ？お母さんも、先の事なんて分からないって言ってた。
でもね。でも、私の気持ちは‥私たちの気持ちは変わらない。証拠があるわけじゃないけど、強い絆で結ばれてるの。

来月の２２日に、また聡が家に来るから。お父さんも仕事終わったら寄り道しないで帰って来てね。』


『‥‥』

２人の間に長い沈黙が続いた。私はこの沈黙に耐えられなくなり、



『私も釣りやらなきゃ。ここも釣れなそうだし‥今日の夕飯は、私の腕にかかってるのかも』


そう言いながら立ち上がり歩き始めた。
なんとなく‥お父さんがこっちを見ていたような、そんな視線を背中に感じた。




私は、釣竿を持ってお母さんの横に座った。

『お父さんのいた場所も‥魚いなそうだったよ』


『そっか。』

それ以上、何も言わなくてもお母さんは分かってくれた。