妖魔03(R)〜星霜〜
「高いな」

30メートルはあるだろうか。

そこまで高いとテンプルナイツに見つからないのだろうか。

結界の力かもしれないな。

「モンドはどこにいるんだ?」

「上の方だと思う。モンドは目がいいから高い位置の実を見つけられたんだ」

上の方は葉に隠れていて、よく見えない。

「その内、戻ってくるんじゃないか?」

「ずっと待ってても戻ってこないんだよ!」

チェリーの言い方からすれば、1時間くらいは経っているかもしれない。

「おーい!聞こえるかあああああああ!?」

大声で叫んでみるが、返事がない。

「何やってんだよ」

「どうしよう?皆、連れてきたほうがいいかな?」

「大事になるだろうが、連れてきてもいいかもしれないな」

そっちのほうが、簡単に助けられると思う。

「大事になったら、モンド、どうなっちゃうのかな?」

「そりゃ、ビシバシ怒られるだろうな」

「えええ!?モンドがビシバシされるのやだな」

「ううむ」

もう一度木を見上げてみる。

「登れない事はないか」

今日はまだ午前しか体力を使っていない。

「え、お兄ちゃんまで登っちゃうの?」

チェリーが心配そうな顔をしている。

「少ししても戻らなかったら誰かを連れて来い。大事になるのはそれからでも遅くはねえさ」

木登りなんか余計な体力を使うだけだが、緊急事態だ。

「うっし」

木に抱きつき少しずつ登る。

ろくな道具がなく、素登りしかなかった。

しかし、幹が太いので腕が向こう側まで回らない。

少しでも力を抜いたら手が離れてしまい、落ちる事になるだろう。

部分部分に力を込めて、下を見ないように上を向く。
< 105 / 355 >

この作品をシェア

pagetop