妖魔03(R)〜星霜〜
妖魔達が外に出てるのだが、仕事場に向っていない。

何かが来るのを待っているように、村の入り口を見つめている。

「一体、何なんだ?」

カメリアの姿も見つけて、近寄っていく。

「カメリア、どうしたんだ?」

カメリアの肩を持って振り向かせると、少し顔が青い。

「少し、嫌な気分がするのさ」

「具合が悪いなら休んだ方がいいぞ」

「解らないんさ。でも、何だか」

カメリアが最後まで言う前に、村の入り口から一人の大きな傷だらけの男が村に入ってきた。

男は筋肉質で髪が長い。

服装はボロボロの群青のコートを着ており、浮浪者に見えてもおかしくない。

「人間?」

結界を張られているのに、人間が入ってこられるのか?

「アレは人間じゃない、魔力を、感じる」

「じゃあ、妖魔か?」

「純粋な妖魔、ってわけでもない」

気分の悪そうなカメリアは、今にも倒れそうである。

「カメリア、本当に具合が悪いのなら、今日は仕事を休んで家でゆっくりしたほうがいい」

「でも」

浮浪者の男が何者であろうが、関係なかった。

もし、敵だとしても、村の妖魔の数を考えれば消す事は造作もないはずだ。

それよりも、今はカメリアの事が気になっている。

「行こう」

カメリアを連れて家に向おうとする。

この島で妖魔が敵ではないという先入観があったのか、数名の村妖魔は男を気遣うために近づこうとした。

火野長老やウッドも嫌な気配を感じているのか、男の事を遠くで見ている。

「長老!彼が長老と話がしたいと言ってますよ」

火野長老は訝しげな表情を崩す事無く、男に近づいていった。
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