妖魔03(R)〜星霜〜
後ろに立っていたのは、男の村妖魔だ。

名前までは覚えていないが、働く姿を見る事はあった。

「埋めておくんだ」

心臓を突き刺され、絶命した男は寝そべったまま起き上がる気配はない。

当たり前の話だ。

死ねば、誰もが起き上がる事など出来ない。

数体の妖魔がハンスの遺体を運んで行く。

「呆気ないような気もするんだがな」

「でも、死んでいた」

死亡は確定したのだが、納得して良いものなのだろうか。

敵が何も考えずに、ただ突っ込むだけの行動を取るのか?

「カメリア、具合はどうだ?」

死亡していた奴よりも、生きている者を心配したほうがいいだろう。

「さっきよりは少しマシさ」

「今日は休んだ方が良い」

「駄目さ。皆に迷惑がかかる」

「何言ってるんだよ。途中で倒れたら、もっと迷惑がかかるだろ」

「お兄さんの気持ちは嬉しいけど」

「彼の言うとおりにしなさい」

カメリアが頑なに拒んでいると、火野長老が休息を促してくる。

「長老」

「ハンスという男の影響だとすれば君のせいじゃない。今日は休みたまえ」

火野長老は、村人には優しい妖魔だな。

カメリアの分まで仕事をするんだろうか。

「火野長老も言ってるんだしさ」

「君はカメリアの看病をするんだ」

「嬉しいっちゃ嬉しいけど、一日延びるんじゃないだろうな?」

「君の頑張り次第だろう。それに、カメリアに最初に休めと言ったのは君だよ。だからこそ、カメリアが元気になるように、君は奉仕すべきだ」

「解ったよ」

一日延びようが延びまいが、カメリアの事が気になりどっちでもよくなっていた。

「お兄さん、仕事に行っていいよ。私は寝込むほどでもないさ」

「おいおい、長老命令だろ?従わなかったら何が起こるかわからねえって」

「あ、ちょっと!」

半ば強引にカメリアを家へと押していった。
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