妖魔03(R)〜星霜〜
「お兄さんにこんな強引なところがあるとはねえ」

カメリアの家で、俺とカメリアは椅子に座っていた。

「強引にならなきゃ、動かないだろ」

「まあ、いいけどさ。それで、お兄さんは何をしてくれるんだい?」

「カメリアが安心して眠れるように傍にいようかなと思ったんだけど、椅子に座ってるんじゃな」

「お兄さん、私は眠くもなければ、横になるほど辛くもないんだ」

「じゃあ、カメリアの話でも聞こうか」

「病人に話をさせるのかい?」

「溜まってる愚痴でも吐き出してもらって、気分をすっきりしてもらおうかとさ」

「そうさねえ、お兄さんが何も考えてなかったのは、失点かねえ」

「す、すいません」

「冗談冗談。お兄さんの気持ちは嬉しいさ」

本当に気分が良くなったのだろう、頬に赤みが戻ったカメリアが笑みを浮かべる。

「お母さん、お兄ちゃん来てるの?」

チェリーが寝室から出てきた。

「チェリーは家にいたのか」

「今日は外に出ないように言ってあるのさ」

カメリアの気分の悪さと関係していたのか。

もしかすると、何かがあると勘付いて退避させていたのかもしれない。

「カメリアの言う事を聞いて大人しくしてたのか、偉いぞ」

柔らかい髪をもった頭を撫でる。

「お兄ちゃんの手、大きいね」

笑顔で答えてくれるのは心の肥やしになるな。

「ねえねえ、お兄ちゃんはずっといるの?」

「いや、もうすぐ、村から出るんだ」

「ええ!?出て行っちゃうの!?」

「ごめんな」

「お兄ちゃんがいるとお母さんも笑顔でいてくれて、嬉しかったのに、居なくなっちゃやだよ」

チェリーは俺の足にしがみついて、必死の抵抗を見せる。
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