妖魔03(R)〜星霜〜
「チェリー、お兄さんが困る事をしちゃいけないよ」

「だって!お兄ちゃんが居なくなったら、またお母さんが寂しそうにするもん!そんなの、見るの嫌だよ!」

チェリーは泣き声を上げて訴えてくる。

自分のためもあるんだろうが、カメリアの事を考えての行動をとっている。

とても親思いの良い子だと思う。

だからこそ、カメリアは強く言えないところもあるんだろう。

子供は叱るだけが全てじゃない。

俺は膝を突いて座り、チェリーの両肩に両手を置く。

「チェリー、カメリアの事は大好きか?」

「うん」

チェリーは泣きながらも必死に頷く。

「カメリアも、チェリーの事は大好きだよな?」

「ええ、そうさ」

カメリアはしっかりと力強い返事を聞いた。

「チェリーはさ、今は俺だけがカメリアを笑顔に出来ると思ってる、そうだろう?」

「うん」

「だけどな、それは違うんだ。さっき、お互いが大好きだって言っただろ?」

「うん」

「お互いが好きなのに、寂しそうな顔して笑顔にならないってのはおかしいだろ?」

「そう、だね」

「それにチェリーは家族なんだ。俺よりもカメリアを笑顔にする方法を知ってるはずだぜ」

「でも、どうしたらいいの?」

「それはな、一緒にいてお話するのでもいいし、遊ぶのでもいい。チェリーと行動する事が笑顔に繋がるはずだ」

しかし、チェリーだけでは埋められない穴もあるのも事実だ。

言っている事は嘘ではないが、心を休めるのに男性が必要だとすれば、難しい話になってくる。

「それに、世界は繋がってるんだ。二度と会えないわけじゃない」

月並みの台詞ではあるが、言わなければならない事だ。

「お兄ちゃん、また、会いにきてくれる?」

「当然」

俺は小指をチェリーの前に持って行く。
< 129 / 355 >

この作品をシェア

pagetop