妖魔03(R)〜星霜〜
「お嬢様を泣かせるとは、何奴ですか!」

フェンスの向こう側から、迷彩服を着込んだ葵さんの姿が現れましたね。

「さすが、葵さん。常に江口さんの事を見守っている事には感服しますよ」

葵さんは校舎の壁でも登ってきたんでしょう。

「外道!学園に忍び込んであなたの行動を伺ってましたが、やはりお嬢様を手篭めにするおつもりですね!?私はあなたのような外道に家の敷居を跨がせるつもりはありません!」

フェンスを乗り越えて、こちら側に舞い降りました。

「私としては彼女の豪邸に住める方は連太郎さんがお似合いだと思いますよ」

「私は騙されません!」

背中から、バッドを取り出しましたね。

戦闘をやる気満々なのはいいですが、葵さんですと死地には連れていってもらえそうにないんですよね。

「葵さんが変なところから出てくるのは気にしないし、そんなに拘る必要ないから。私、赤城先生とあんまり関わりたくないんだよ」

江口さんは葵さんの腕を掴んで私から遠ざけようとしています。

「ですが、この外道はお嬢様を孕ませるつもりです!」

淑女が破廉恥な言葉を口に出すとは、世の男性に人気が出てしまうでしょうね。

「私としては江口さんともっと語らいたいんですよ。それこそ、あなたの自伝を作れるくらい一晩中ですね」

「嫌!先生と関わるとろくなことないの!連太郎さんも、あの日から悩まされ続けてるんだから!」

「私の夢を見てくれているんですか?彼にお礼を言わなければなりませんね」

「もう、近づかないで!」

「お、お嬢様!外道はここで粉砕しておかなければ!」

封筒を地面に叩きつけて、葵さんを連れて屋上から姿を消してしまいましたよ。

「おやおや、コーヒー牛乳の効果は薄いみたいですね」

残念ですが、一つ知恵を身につけましたよ。

私はクマの封筒を拾い上げ、中身を確認します。

中には一通の便箋が入っているようです。

『赤城さん、お前の大切な物は預かった。返して欲しくば、お前一人で地図の場所に来い』

脅迫文のような調子で書かれてますね。
< 13 / 355 >

この作品をシェア

pagetop