妖魔03(R)〜星霜〜
「何?」

チェリーが不思議そうな顔をする。

約束の時の儀式は、村にはないらしい。

「チェリーも小指を出して」

「うん」

俺の指とチェリーの指を絡める。

「これはな、約束の時の儀式なんだ。そして、絆を強くするための、儀式だ」

美咲の事を思い出す。

誰かに美咲の言った事を伝えるとは、思いもしなかった。

「指切りげんまん、嘘ついたら針飲ます、指切ったっていう呪文を唱えた後で、小指を離す。それで、約束は絶対に守らなくちゃならない。良いか?」

「うん」

一瞬静かになり、同時に呪文を唱え始めた。

「「指切りげんまん、嘘ついたら針飲ます、指切った」」

絡んだ指が離れ、俺達の間には強い約束と絆が出来上がる。

「よし、これでいい」

「本当だよね?」

「きっと来る。信じろ」

俺達の間にのほほんとした空気が流れる。

しかし、それも束の間の事だった。

「う、く!」

カメリアの様子が急変し始めた。

胸の辺りを押さえて、苦悶の表情を見せている。

「おい、カメリア、どうした?」

「お母さん?」

二人の様子を尻目に、苦しそうな表情は変わらない。

「来るんじゃ、ないよ」

「何言ってるんだよ、やっぱり、具合が悪いんじゃないか」

俺が近づこうとすると、女性とは思えない力で押されて吹き飛ばされる。

壁に激突し、背中に猛烈な痛みを味わう。

「ぐ、どうした、っていうんだよ?」

「はあ、はあ、今すぐ、チェリーを、連れて逃げて」

カメリアだけじゃない、チェリーも苦しみ始めている。

一体、何が起こっているというのか。
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