妖魔03(R)〜星霜〜
ハンスは片腕で大剣を振るう。

確かに、腕には隆々とした筋肉が蓄えられているが、1メートル50はある大剣を片腕で扱うのは異常だ。

「痛い思いをするのは俺なんだがなあ」

「死なねえんだから、別にいいだろうが!」

「そういうもんかねえ」

のんびりとした口調だが、前から飛んできた岩を大剣で真っ二つにする。

「ぺっぺっ!マズいモン斬るんじゃねえ!!」

「無駄に痛い思いすんのは嫌なんだよお」

その後に何発もの岩がハンスに襲い掛かる。

しかし、軽く避けたり、ぶった切ったりと、あまり意味を成さない。

少し離れた先には、岩を空中浮遊させている妖魔が一匹いる。

それは、見知った能力であり、見知った妖魔だった。

「モンド」

だが、すでに過去の面影はなく、肌は緑色の変色し、腕の伸びた一つ目小僧になっていた。

チェリーと同じ子供だというのに、モンドのほうが暴走が早いというのはどういう事だ。

いや、疑問に思っている場合ではない。

岩をぶつけようとしたせいで、ハンスにロックされているようだ。

「見た目は不味そうだな、おい」

「文句言うなよう」

「け!だったら、さっさと斬って他の妖魔を食らわせろ!」

「我が侭な奴だなあ」

強敵を殺すために岩を飛ばしていくものの、同じ事の繰り返しだ。

どんどん間合いを詰められていく。

「ち」

暴走しているとはいえ、目の前で顔なじみを殺されるのは溜まったものではない。

確かに、優先順位は間違っているかもしれない。

「カメリア、すまない」

地面の石ころを拾い、ハンスに投げつける。

だが、ハンスは石をみずとも、片腕で受け止めた。

「おいおい、人間がいるなあ」

「ギャハハハ!斬っちまえば何だって同じだっつうの!」

ハンスをこちらに向けた事で安心してしまったのかもしれない。

『暴走』した妖魔には、俺の意思など関係ないのだ。

だからこそ、モンドは一度狙ったハンスに飛び掛っていく。
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