妖魔03(R)〜星霜〜
無敵でない分、光一発で消滅は可能だ。

しかし、倒れて制限時間が終わりを告げてしまう。

「くそ」

どうにかして横を抜けていくしかない。

蔓が延びて襲いかかってくる。

サイドステップでかわしたが、もう一本の蔓が再び襲い掛かる。

蔓は素早い動きを見せているので、子供を抱えた状態だと二回避けるくらいでいっぱいいっぱいだ。

蔓妖魔も容赦なく、上手い具合に蔓を操る。

しかし、三回目が襲ってくる前に、避けている時に拾っておいた石を投げつける。

三回目は石を弾き、隙が出来る。

その間に、俺は横から回って逃げようとする。

「ぐう!」

突然、息が出来なくなった。

「今度は、ウッド、かよ」

何故、よく知っている奴ばかりが俺の目の前に現れるんだ。

俺の葛藤を他所に、隙を狙っていた蔓は肩を射抜いていた。

「いでえ」

注射なんてアウトオブ眼中って程に痛い。

人の皮膚を通るなど硬く出来ているようだ。

痛みと空気を吸えない苦しさが、地獄を表現している。

「へ、へへ」

おかしくなりそうで笑いがこみ上げてくる。

だが、血が抜けたせいで方法を思いついた。

再び、優先順位を狂わせるわけにはいかない。

本当なら、知り合いを殺したいなんて思わない。

誰だってそうだよ。

でも、逃げられないのなら、他の方法がないのなら、やるしかないじゃないか。

あの時のように、俺は無駄に命を散らそうなどとはしない。

俺は死にたくないし、生きなければならない。

チェリーを、無事な場所まで連れて行かなければならないんだ。

それが、約束なんだ。

「悪いな。これ以上、約束を破りたくねえんだ」

刺さった腕で蔓を掴んで、相手の魔力が枯渇するほどに一気に吸い上げた。
< 135 / 355 >

この作品をシェア

pagetop