妖魔03(R)〜星霜〜
もう片方の蔓が伸びようとしていたが、力尽きたように地面に落ちた。

「はあ、はあ、う、う、く」

肩の蔓も力が抜けて、植物の蔓と同じ柔らかさに戻った。

「ぐ」

蔓を引き抜く際に痛みが走る。

「さすがに、動けないだろ」

ウッドが動けないくらいに吸い込んだせいで、魔力酔いが起き始めている。

「後、少しだ」

ウッドは死んではいないし、暴走は解けていない。

魔力を枯渇させて殺す事は出来なかった。

殺す事は苦しみから解放する手段なのかもしれない。

誰かを襲う前に、最後の魔力を吸い上げるしかないのか。

いや、優先順位を狂わせるな。

今は歩くのが辛く、気分も悪い。

腹八分目を超えている状態で、魔力を吸い上げると動けなくなる。

白い空間で魔力を減らすという手段も在るだろう。

しかし、外の状態が本当に時間が止まっているという保証がどこにある?

確証のない事を試すほど、時間があるとはいえない。

それに、光を放っても動けなくなるからこそ、今の状態がベストだ。

「もうすぐ、楽になるからな」

前に進もうとしたが、背中から腹にかけて蔓が貫通していた。

「な、んだと?」

痛みよりも、驚きの方が大きい。

後方に蔓妖魔がいる。

倒れているウッドとは別物で、同じ系統に見えるところ、ルーツかもしれない。

「ぐ」

少し遅れて、激痛が走る。

兄妹で外に出かけていたのか。

だからこそ、近くにいた可能性が大きい。

「くそ」

気絶しそうになる。

チェリーは、すでに6分は元の姿に戻ってきている。

「ああああああああああ!」

腹の蔓を掴もうとしたが、先ほどの様子を見ていたのか引き抜かれた。

「ごあ」

俺は力が抜けて膝をつく。
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