妖魔03(R)〜星霜〜
「はて、大切な物ですか?」

何かありましたかね。

手紙の主には私の大切な物とやらを的確に当てる事が出来る推理力が想像以上にあるようですね。

「ああ、解りました」

私の死地を預かるとは、体の芯から疼きますね。

どんな手段で、私を地獄に追いやってくれるのでしょうか?

自分の頬が自然と釣りあがってしまいますよ。

もう一枚、紙が入っているようです。

手書きの地図のようで、芸術家も驚愕してしまいそうな上手さがありますね。

「廃工場ですか」

今は昼休みなんですよね。

後半、私に授業はありません。

他にも仕事は残っていますが、大切な物というのならば行かなければなりませんね。

やはり、秋風は楽しみも与えてくれるようです。

季節の変わり目で風邪をプレゼントしてくれそうですが、ここ一番で高揚させてくれるとは思ってもみませんでしたよ。

さてさて、どのような心優しき方なんでしょうね。

同僚の方に用事があると言い、学校からタクシーで地図どおりに進んでいきます。

運転手さんと和気藹々と話しあいながら、二十分経った頃でしょうか。

町外れに出て、廃工場まで辿り着いてしまいましたよ。

これは運転手さんの腕前が良いとしか言えませんね。

お金を払い、タクシーから降りると眼前には大きな廃工場があります。

不景気なのでしょうかね。

今は使われてる気配はありませんので、稼動している音は聞こえてきません。

窓ガラスもところどころ割れてますが、哀愁が漂って自分の住んでいた町を思い出してしまいますよ。

「さて」

この高鳴る鼓動をどう処理してくれるのか、期待ばかりが募りますよ。

廃工場の錆びがついた大きな扉を開けて、中を確認します。

中は薄暗く湿気ており、放り出された器具が散らばっているようです。
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