妖魔03(R)〜星霜〜
「パパー!」

工場の真ん中には、椅子にロープで縛られた摩耶さんだけがいるようです。

「摩耶さんじゃないですか。自分を縛るなんて器用じゃないですか。私にも教えてもらえませんかね?」

腕の関節を抜きながらも腕を使えるなんて、まさに曲芸じゃないですか。

「えー!ウチ、自分でこんなん出来へんで!」

「おや、では、手紙の主さんと遊んでいるんですか。仲睦まじく過ごすのは微笑みたくなりますよ」

「ちゃうよ!ウチ、捕まったんや!」

「おや、鬼ごっこですか?主さんは走ることに自信があるようですね」

二人で鬼ごっこというのも、スリルがあっていいですね。

ですが、摩耶さんの小さな肉体からすれば、すぐ捕まってしまいそうですけどね。

「うう、パパー!」

「いい加減に黙れ!」

姿が見えませんが、野太いダンディーな声が聞こえてきました。

「手紙の主さんですか?隠れて声を出すのは大変そうですね」

「うるさい!さっきから勝手にベラベラと喋ってるんじゃねえ!!」

なにやら、手紙の主さんは怒っているようです。

「私はあなたとの会話にも洒落込みたいんですよ」

「時間稼ぎなど必要ない!俺はお前に復讐する!」

「とても楽しそうな行事を用意してくれているんですね。ありがとうございます」

今から手紙の主さんが死地を渡してくれるんですね。

ですが、ただで死地に行くのもつまらない話ですね。

「今から少しでも動いてみろ!そこのガキを撃ち殺す!」

「摩耶さんは葉桜君とのパイプ役なので困りますね」

今はいませんが、必ず彼は地獄の果てからでも戻ってくるでしょう。

彼は摩耶さんを正妻にしなければなりませんからね。

「まずは、お前に痛みを少しずつ与える!」

銃声が鳴り響いたかと思えば、私の足が衝撃を受けて穴をあけてしまいました。

威力は結構高くて、勢いで片膝をついてしまいましたね。

「どうだ!痛いか!俺の弟はもっと痛い思いをして死んでいったんだ!」

「おや、兄弟がいるんですか?一人っ子の私にはない喜びを持っていますね」

鬼ごっこからキャッチボールまで、二人遊びが出来るなんて何て羨ましいんでしょうか。
< 15 / 355 >

この作品をシェア

pagetop