妖魔03(R)〜星霜〜
手紙の主さんは答えることなく、次は左腕を撃ち抜きました。

「靴の紐が結べなくなりましたね。しばらくは摩耶さんにお手伝いしてもらわなければなりませんよ」

「ぱ、パパー!嫌や!嫌やあああ!」

摩耶さんが泣き叫んでいるようですが、私は楽しくて仕方ありませんよ。

どうしようもない状況、いつ死地に行ってもおかしくありません。

「余裕があるようだが、お前は確実に殺す!そこのガキも後で殺す!」

「死地を与えてくださることには感謝しましょう。ところで、次はどこを撃つんですかね?」

「ほう」

残った片足を撃ちぬかれ、私は立てなくなってしまいましたよ。

感覚が鈍くて痛みが届かないので、歩けないというのも不思議なものですね。

手紙の主さんは普段しない匍匐全身を推奨してるのでしょうか?

「おや、自衛隊の真似事をさせてくれるとは、中々出来ない体験ですよ。ところで、あなたはどなたのお兄さんなのでしょうか?」

「知らない?知らないだと!?お前はああ!!」

右腕を撃たれ、本当に何も出来ない状況になってしまいました。

「俺は、お前に殺された毛の薄い男の兄だ!」

毛の薄いといわれれば、ツルリンパさんですか。

お金はいただけませんでしたが、惜しい人を亡くしましたよ。

「おや、では、あなたも実はツルリンパだったりするんですか?」

「早く死にたいようだな」

今度は横っ腹を撃たれてしまいましたね。

腕や脚、腹からも流血が激しく、魔力の減りも相当なものです。

技を連発することは出来なくなりましたね。

しかし、ツルリンパさん二号はスナイパーとしての腕はいいようですよ。

ですが、スナイパーなのに喋ってしまうとは、彼もまたお喋りが好きなようです。

「ええ、私を死地に届けて頂く前にあなたに一つお伺いしたいんですがね、冥土の土産にお名前を教えていただけませんか?」

私を殺す英雄の名前を知りたくて仕方がありません。

「あなたのスナイパーの腕は世界を揺るがすほどの精密さがあります。ですから、その人の名前くらいは知っておきたいんですよね」

「マンダム」

「マンダムさんですか、男の世界を感じてしまいそうな名前ですね」
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