妖魔03(R)〜星霜〜
「音を立てずに逃げるぞ」

小声になりながら、体の痛みを抑えつつベッドから降りる。

俺の危険な雰囲気が伝わったのか、泣き止んだチェリーは口に手を添えて動く。

ティアは二足歩行に疲れたようで、四足に戻っていた。

しかし、部屋を出ようとしたのだが、軍服のテンプルナイツが広間に入り込んでいた。

更に緊張感が高まる。

どうする?

この部屋もすぐにバレてしまう。

「ん?」

軍服の数を数えると、外にいた五人が広間にいる。

誰もいないと油断したのか.

あいつら、プロだぞ?

五人と換算していいものか。

静かに扉を閉めて、もう一度、部屋の窓から外の様子を覗いてみる。

誰もいないようだ。

何で、外で数人待機させていないんだ?

ハンスにやられたから、妖魔なんて敵じゃないとでも思っているのか?

そんな小学生じみた考えがあるわけないだろう。

油断はしていないだろうし、見つかり次第、捕まるか撃ち殺されるのが落ちだ。

ともかく、さっさとこちらの窓から出るに限る。

音を出さないように窓を開け、チェリー、ティアは外へと出る。

何ら音がしないところを見ると、外には援軍はいないようだ。

しかし、都合の悪い事にこの部屋の探索の番は回ってきたようで、テンプルナイツがドアを開けて銃を構える。

「動くな!」

俺はすでに窓から半分出た状態だ。

訓練された相手だろうが言う事を聞いてはいられない。

俺が出た瞬間に銃弾が上空を飛んでいく。

「ぐう」

降りただけなのに、完治していない傷が痛む。
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