妖魔03(R)〜星霜〜
後ろから、ドアを開ける音が聞こえてくる。

「やべえ!」

走るのが辛い。

普段の二分の一もスピードが出せていないような気がする。

二人も必死に逃げているが、追いつかれる。

だが、その前に、前に立っている男が一人いる。

口にはタバコを咥えているようだ。

「よう、お前さん」

「お前!?」

「お父さんに向って、お前はないだろう」

俺が親父の横を通り過ぎようとした瞬間、腹に一撃を入れられる。

「が、は」

レインのときの一撃なんて眼中にないくらいに痛い。

「お兄ちゃん!?」

「こいつの痛い顔を見たくなけりゃ、お前さん達もじっとしとくんだな」

すぐに、銃を持った五人に追いつかれる。

「退魔師か、ソレをこちらに渡してもらおう」

「構わないないんだが、この歳になるとそっちまで運ぶのも腕がもたねえんだ」

「仕方ない」

五人の中の一人が俺を受け取りに来る。

「ご苦労ご苦労。ついでにもう一つやってもらいたい事があるんだがな」

親父が、俺の体を持ち上げようとしている軍服の肩に手を置く。

「何だ?」

「これから、夢の世界で生きてくれや」

次の瞬間、俺の襟首を持って森の方向に放り投げるのと同時に、他の軍服のいる方向に受け取りに来た軍服に蹴りを入れて戻す。

その際、ティアも行動に移っており、チェリーの襟首を噛んで森へと逃げる。

親父も当然のことながら、森へと飛ぶように逃げていた。

軍服達の銃口はこちらを向いているようで、火を吹くかと思いきや、銃弾を撃った音とは違う何かが爆発したような大きな音を立てる。

「ぐ、あち」

ついでに言うならば、爆風が吹き荒れている。
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