妖魔03(R)〜星霜〜
「お前たちの魔力を、分けてくれ」

ティア、チェリーに頭を下げる。

「お兄ちゃん」

「これは、俺の我が侭だ。でも、頼む」

自分の死ぬ部位を少なくするために、ティアとチェリーの魔力を貰う。

我が侭以外の何物でもない。

「いいよ」

「チェリー」

「チェリー、お兄ちゃんを助けたい」

チェリーは笑顔になり、小さな手で俺の手を握る。

「ブヒ」

ティアも蹄を俺の手にくっつけた。

「すまねえ」

理由を聞かずとも、彼女達は俺を助けてくれる。

俺も、絶対に彼女達を助ける。

「後は、波動を打つだけだ」

しかし、大きな波動を打てば、見つけてくれと言っているようなものだ。

波動を調整できないか。

「やるしかない」

彼女達の魔力を吸い上げる。

順調に俺の体内に注ぎ込まれていく。

そして、魔力酔いが起こり、頭痛を催す。

身体も冷光を放ち始め、後ちょっとというところで、チェリーの額には汗が浮かび上がる。

限界か。

ティアは豚だから表情はよく解らないが、限界に近いはずだ。

彼女達の魔力は残りわずかのところまで来ている。

これ以上、魔力吸収を行えば、彼女達は動けなくなってしまうだろう。

さすがに、二人を運び出すほどの力はない。

魔力吸収をやめ、俺は強くイメージし、溜まった魔力を波動に変換していく。

次第に、手の平には破滅の光が溜まっていく。

「言う事、聞いてくれよ」

俺は波動の操作をすべく、更に集中力を上げた。
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