妖魔03(R)〜星霜〜
動く方の手で校門を開けて、外に出ます。

魔力の関係上、ナイフを生成できるのも後一回のようです。

「まだ終わっていませんよ」

しかし、乾萌黄さんは腹を押さえ、犀角を地上に落としたままです。

「あなた、まだ動けるんですの?」

乾萌黄さんは私を見て驚いていますが、今日の晩御飯のレピシでも思いついたのでしょうかね。

「今日の晩御飯を作るのなら、秋刀魚をオススメしますよ」

「ありがとう、ですの」

犀角を持ち上げようとしていますが、腕を震わすばかりで立ち上がる事はありません。

「犀角は、必要ありませんわ」

「おやおや、武器なしで戦う精神は男前というしかありませんね」

しかし、隣から乾瑠璃子さんが近づいてきます。

「母さん、子鉄ネエの戦いは終わったわよ」

乾瑠璃子さんの言葉を聞いて、野川さんへと目線を移します。

先ほどと変わりないようですが、野川さんは立ち上がろうとしません。

乾雲丸さんは、鉄球を直しています。

「おやおや、私の知らない間に、壮大な物語も終焉を迎えてしまいましたか」

ナイフを作り出そうとしましたが、本筋が終わっているのでしたら意味がありませんね。

「現実とは、救うSPACE(余地)のある世界」

「師匠」

「お前の現実に、SOMETHING(何か)を救う余地はないに等しい。それ故に、MARGIN(余裕)が生まれない。REVERSE(逆)もまた然り」

野川さんは俯いてしまいましたね。

「余裕なきJUDGE(判断)の結果、あるべきはずの余地は足の踏み場もLOSE(無くす)」

歩み寄った乾雲丸さんは、前に片膝をついて座ります。
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