妖魔03(R)〜星霜〜
「ストレスは趣味に発散させるのがいいと思いますよ。今ならサイクリングなどどうでしょう?」

「自転車なんて、数年乗った事ないわ」

「残念ですね。森林浴とサイクリングは自然と一体化できるのでオススメしますよ」

「また今度にしておくわ」

「おや、今日やっても損はしないと思いますよ」

「それより、あんたは丞ちゃんの場所を知らないの?」

「葉桜君はしばらく学校に来てません。自分を見直すために逃避行をしているのかもしれませんね」

「あんたが見直したほうがいいと思うわよ」

「ご指摘ありがとうございます。ですが、お金がないんですよね。貸してくれませんかね?」

「お断りよ」

足の筋肉が悲鳴を上げているのでしょうか、傍に在る座椅子に腰を下ろしました。

「あんたも知らないか」

「私としては彼が傍にいたほうが死地に近づく事ができるんですけどね」

「丞ちゃんを変な事に巻き込むんじゃないわよ」

「羨ましい事に、死地に近い因果律は彼にありですよ」

だからこそ、私には彼が必要だと言う結論に至ったわけですね。

「まあ、そうかもしれないわね」

「野川さんは葉桜君に会いたくないのですか?」

「あんた、アタシの話聞いてないでしょ?」

「いえ、言動とは別に髪を短く切っていますからね、イメージチェンジで葉桜君の心を掴もうとしていると思ったんですよ。失恋で髪を切るなど、最近聞きませんからね」

「あんた、解って言ってるわね」

睨む顔にも覇気が篭っていません。

病院食を食べたせいなのでしょうか?

確かに、現代人に味の薄さは必要ですが、覇気を出すにはもう少しカロリーのあるものでないと足りませんからね。

「病院食で足りないというのは、痛いほど解ります」

「全然足りないけど、じゃなくて、今さっき何ていった?」

「カロリーが足らないといいましたよ」

「その前」

「イメージチェンジの件ですか?私から見れば、女に磨きがかかってお似合いだと思いますよ」
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