妖魔03(R)〜星霜〜
「それもまた前向きで、あなたの志に惚れ惚れしてしまいそうですね。ですが、彼の行方は闇の中です。希望を叶えるとすれば、ボールを7個集めるか、魔法陣を描いて魔物を呼び出して連れ戻してもらえばいいと思いますよ」

大猿が暴れたり、魔界の王様が現れたら、世界は大混乱になってしまいますがね。

「そんな面倒臭いことしなくても、あんた達には不可思議な能力があるでしょ」

「それもそうでしたね。私としても、人を指定位置に召喚という能力には興味がありますよ」

「いや、丞ちゃんの場所を探るだけでもいい。後はアタシがそこに行くから」

「故人曰く『行動的な人はカリスマ性に富んでいる』といいますね」

かの有名な『化政 米(かせい よね)』の言葉です。

「それじゃ、世界中がカリスマだらけになっちゃうわよ」

「時代の流れかと思います。それはそれで、私を死地に送ってくれる人が増えるので、ありがたい話ですがね」

野川さんは歩き続け、病院の入り口を抜けて外に辿り着きます。

「何処まで着いてくるつもりよ?」

「あなたとの会話に花が咲いてしまいましたね。私としては軽い散歩で済まそうと思っていたんですよ?」

「あんたはまだ入院中でしょ?アタシは今日退院なのよ」

「おめでとうございます。菊の花でも用意しておけばよかったですね」

赤白黄色と並べればカラフルになって、喜びも増す一方でしょう。

三色在るかどうかは謎ですがね。

「アタシを死地に逝かせたいわけ?」

「滅相もない。誰しも、平等に死地が存在しますが、あなたよりも早く逝きたい気持ちが胸いっぱいにあるんですよ」

「あんたが言うと、うそ臭く聞こえてくるわよ」

「私としても、ペテン師やジゴロに一度なってみたいと思ったんですがね」

「教師のいう言葉じゃないわ」

病院の前の道路から、黒のエルグランドが舞い込んで着ましたよ。

安全運転とは思えないような速さで病院の入り口前で止まりました。

道路から入り口に来る途中で、驚きのあまり心臓が止まりそうな方が何人か見えましたがね。

中から出てきたのは、百合の花が似合いそうな着物姿の乾萌黄さんです。
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