妖魔03(R)〜星霜〜
「敵を生かす事が出来るのは心身共に強い奴だけだ」

俺は弱い。

だから、向ってきた相手を再起不能にするしかない。

ハゲだって、しばらく動けないように足を撃てば、襲ってくる可能性を減らす事が出来る。

恐怖があるから、恐怖を取り除くための行動を取るしかない。

相手を活かす事が出来るのは、追随を許さないほどの強さを持つ者。

子鉄はハンス以外の奴等は峰打ちで倒していた。

命の重みを弁えている。

俺には、不可能な事だ。

俺達は外に出る。

そこは森の中で、敵はいない。

「潮の匂いがする」

俺達は海の傍に出たというのか。

歩いてきた時間を考えると、基地の近くではあるがまだ見つかってはいない場所か。

しかし、洞窟を閉じなければ、再び追っ手が来る。

「お前さん、可愛い子連れてるな」

「あら、浮気心?」

タバコを咥えながら歩いてくる親父と銃を装備した洋子。

「あんた達も、逃げてきたのか」

「おいおい、命の恩人であるお父さんにあんたはないだろう。何度も言わせるなよ」

「何だ、恩の押し売りか」

「お前との会話は必要以上につまらんな。それより、お父さんに萌黄の養女と会話をさせるんだ」

子鉄に近づく前に間に入り込む。

「それより、洞窟の入り口を破壊しないと、追いかけてくるぜ」

「面倒くさい奴だな。ビビってるなら、お前さんがどうにかすればいいだろう」

「蛍さん、アタシからもお願いします。怪我をした者もいるんです。ここで治療をするための時間稼ぎぐらいはしておきたいんです」

子鉄が親父に頭を下げた。
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