妖魔03(R)〜星霜〜
「これで、よしと」

洋子は順調に治療を施した。

俺の腕には痛みが走っていないから変化は解らないが、魔力の放出は防ぐ事が出来るだろう。

「しかし、見事な手捌きだな」

「へへ、これでも親は医者なんだ」

「『親は』?」

「私に医師免許はない」

「じゃあ、見よう見まねでやってきたって事かよ?」

「そうだ」

不安になる。

しかし、包帯の巻き方や傷の手当ての仕方は、医者そのものであった。

お吟さんや洋子が治療をするための道具を持ち歩いているのは、自分が怪我をしてもいいようになのか。

「この豚さんは、コレは時間がかかるかもしれないな」

洋子は難しそうな顔をしている。

「深刻か?」

「まあな。でも、治らないわけでもない」

「そうか。休ませる場所、探さないと」

近くに屋根のある場所とか、あればいいのだが。

「あんたの期待してる物は近くにある」

「本当か?」

「妖魔達が使っていた物だとは思うんだけどな」

チェリーの父親達か。
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