妖魔03(R)〜星霜〜
俺達が案内されたのは、決して大きくはないが安定感のある木製の家だった。

少し先に行けば、海が見える。

しかし、見つかると厄介なので森から出る事はない。

洋子が言うには、村ほどではない結界が張られているらしい。

鍛錬された退魔師は、気配を感じ取る事が出来るのか。

「肌に違和感を感じるってだけで、はっきりとは解らないけどな」

家の中にある机の上に乗せて、洋子と親父が様子を見る事となった。

親父が役に立つかどうかは謎だ。

その間に、俺達は外に出ておく事になる。

「少し休めるな」

子鉄と空気岩は周囲を見回して、確認しているようだ。

チェリーは俺の隣で座っている。

ずっと移動していたから、考える暇もなかっただろう。

元気のない顔のまま、地面を見つめていた。

「きっと、出られるから」

チェリーの頭を撫でても、本人にとっては気休めにもならないかもしれない。

「丞ちゃん」

子鉄が、鋭い声で俺を呼ぶ。

「何だ?」

「今すぐ逃げて」

「え、何を、言ってるんだ?」

「来るわ」

子鉄の言うとおり、距離の開いた位置から足音が聞こえてくる。
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