妖魔03(R)〜星霜〜
「女の子を、いっぱい泣かせてきたのに、何も出来ないってのは、嫌だよなあ」

子鉄、美咲、ティア、カメリア、チェリー、他の皆。

皆、傷つけてきた。

少しでも何か出来ないか。

自分が死ぬ恐怖もあったが、それ以上に誰かに何かをしようという気持ちが大きかった。

「俺は、楽をしちゃいけないと思うんだ」

「痛みが伴ってもか?」

「ああ」

でも、何をしたって遅い。

俺は死ぬ。

その事実を捻じ曲げる事は、出来ない。

「私はね、いい男には優しいんだよ。お前もいい男だから、どうにかしてやりたいと思うのさ」

「お吟さんが思っているほど、良い奴じゃない。ただの屑野郎だよ」

「今のお前はな。だが、さっきのお前の言葉は真なる言葉。苦痛を伴った人間にしか表す事は出来ないのさ」

四本指を伸ばす。

「お姉ちゃん、何を、するの?」

只ならぬ気配を感じ取り、チェリーはお吟さんに問いかける。

「今から、こいつの全てをビンビンにしてやるアル」

「ビンビン?」

「赤玉が出てもおかしくないくらいにアルよ」

小さい子供になんていう事を教えているのか。

そう思った矢先、俺の胸にお吟さんの指が刺さった。
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