妖魔03(R)〜星霜〜
「道具の製作者が道具に遊ばれていては話にならぬ。ワラワに記憶があるのも、道具の副作用を受け付けぬようにしたからじゃ。そして、コアに直接触った者も記憶はなくならぬ。但し、コアの呪いは魔力に反応するからのう、妖魔のみじゃ」

なら、親父も記憶がなくなったというわけか。

「呪いのコアの能力は、時間を戻す事にあるのか?」

「簡単にいえばそうじゃが、正確に言えばじゃな、分岐点まで記憶だけを逆行させ、その分岐先の事象は消滅するというのが本来の役目じゃ」

「それは、コアを埋め込んだ妖魔の分岐先が消えるという事なのか?」

「記憶の逆行はコアに触れた者に起こり、分岐先の事象の消滅はコアを体内に取り入れた者のみの起こるのじゃ」

子鉄が事故を起こす前が分岐点となっていたわけか。

「ちょっと待てよ。他にも分岐点はあるはずだし、龍姫やお吟さんは俺の分岐点に合わせて、記憶が逆行したのか?」

子鉄の事故の前の分岐点に到達してしまっていたら、俺はどうなっていたのか。

「個人によっては違う。だからこそ、コアを発動させる事は賭けに近いのじゃ」

もし、お吟さんや龍姫が、俺よりも前の分岐点に行ってしまったら?

もし、俺の分岐点が郁乃母さんのお腹の中にいる時だったとすれば?

「じゃあ、二人は、どこの分岐点まで記憶の逆行を?」

「ワラワは割と近かったからのう。何の問題もなかったわ」

「そうか、お吟さんは?」

「アチシにとっては、成功とも失敗ともとれないアルな」

どこか、戻りたかった分岐点があったのだろうか。

「お吟さんは、知っていたのか?」

「ああ、龍姫の事は体の隅の隅まで知っているアル」

コアの事も然りというわけか。
< 343 / 355 >

この作品をシェア

pagetop