妖魔03(R)〜星霜〜
イヴァンは俺の横を通り過ぎ、お吟さんの手をとる。

「あなたは美しい。そして、何よりも強い。あなたがいてくれれば僕としても助かる。僕と一緒にきてはもらえないだろうか?」

人前で口説き始めたぞ。

だが、攻撃を仕掛けたところで、やられるのは目に見えている。

「お前と一緒に行くのは面白そうアル」

「お吟さん」

「でも、コイツとのフィット感は中々の物アル。だから、お前と行く気はないアル」

俺の腕に胸を押し付けてくる。

お吟さんの意志はしっかりと伝わってきた。

「アナタの事を、僕はいつでも待っている」

イヴァンは表情を変える事無く、背中を向けた。

「ああ、君に良い情報を一つ与えよう」

「何?」

「君は本当に理解力が足りないな。今日会いに来たのは一つの礼をするためだと言ったんだ」

何故か上から目線なのが気に入らないが、黙っておく。

ガセであっても、イヴァンの与える情報がどれほどの物なのか気になっていたからだ。

「どこかにある研究所には妖魔と契約を成す方法を研究している。そこに行けば、君も下の下から下の中ぐらいにはなれるだろう」

新たなる力を手に入れられる場所か。

しかし、研究所はあくまでついでだ。

俺自身の肉体を強化しなければならない。

「お前、足元すくわれるぜ」

「所詮は弱き妖魔。力をつけようがつけまいが、僕の掌の上で遊んでいるのと変わらない」
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